第8回京都アニメーション大賞奨励賞受賞作――。
時は明治時代。二十世紀を迎えたばかりの日本・京都。
西洋文化が馴染み始め、街に電気の明かりが灯りはじめたその時代。
和と洋。過去と未来が入り交じる不可思議な時代。
そこには決して歴史には語られない、
その時代を確かに生きた市井の人々がいた。
これは戦争でも、政治でもない。
あの時代。歴史には残らない、どこかにあった恋のひとつ。
「二十世紀電氣目録」とは
明治、大正、昭和、平成……
時代は変わる。
でも恋は変わらない。
第8回京都アニメーション大賞奨励賞受賞作――。
時は明治時代。二十世紀を迎えたばかりの日本・京都。
西洋文化が馴染み始め、街に電気の明かりが灯りはじめたその時代。
和と洋。過去と未来が入り交じる不可思議な時代。
そこには決して歴史には語られない、
その時代を確かに生きた市井の人々がいた。
これは戦争でも、政治でもない。
あの時代。歴史には残らない、どこかにあった恋のひとつ。
あらすじ
覚えていてほしい。
誰かが灯したから光がある。
「うちと一緒に死んで、極楽浄土に連れてってくれる?」
明治四十年。夏。京都伏見に住む百川稲子は、何をやっても上手くいかず、父親に叱責される毎日。彼女にとって唯一の救いは、神仏に祈り信じることだけだった。ある日いつものように伏見稲荷で手を合わせていると、「見えへんもんは信じひん」と吐き捨てる自由奔放な少年・坂本喜八と出逢った。彼は神仏を否定し、これからは電気の時代だと豪語する。
そんな折、稲子に突如結婚の話が持ち上がる。父の一方的な決定に、しかし自分の価値はそれくらい、と諦める稲子。喜八はそんな彼女の逃げ出したいという本心を引き出し、閉ざされた家から連れ出した。
結婚を止める唯一の方法は、奇書『電氣目録』を探し出すこと。それは喜八が幼い頃に書いた電気に関する予言書で、かつて兄・清六が持ち出して行方知れずとなっていた。喜八と稲子――二人は『電氣目録』を探し、京都・滋賀の地を逃げ回る。
消えた『電氣目録』。そこに隠されていた秘密とは――。
登場人物
新京極通りにある蓬莱仏具店で働き、機械修理も受け持つ電気をこよなく愛する少年。15歳。かつて大阪で開催された第五回内国勧業博覧会で、電気で動く近未来の機械たちに魅了され、電気に興味を持つ。「二十世紀は電気の世紀」だと信じて止まず、未来の電気の発明品を妄想した『電氣目録』を執筆した。実家はお寺だが、神仏を信用できなくなって父と大喧嘩し、家を出ている。暗いところが大の苦手。
京都の伏見にある百川酒造の次女として育った。15歳。純粋で活発な性格だが、どんくさいあまり失敗も多く、いつも父の甚右衛門から叱責されている。何でもできる姉と比較してしまい、自分の存在を悲観している。神仏を信じて止まず、何か困った時には伏見稲荷の阿久火大明神に手を合わせに行く。「信じることが取り柄」が口癖。素手での鼠捕りだけは誰にも負けない。
稲子の姉。20歳。 稲子とは対照的に、大人びており何でも卒なくこなす才色兼備な女性。幼馴染の陸は婚約者であるが、顔を合わせれば口喧嘩ばかりしてしまう状態で、現在結婚は保留となっている。彼女の着る白絣とその長く艶やかな髪は稲子の憧れ。酒蔵に生まれ育ったが、酒の匂いが苦手。
大津の米穀商・陸恒吉商店の次男坊。24歳。 真面目で正義感が強く、稲子からは兄のように慕われている。婚約者の規子とは犬猿の仲で、規子の口の悪さにはいつも閉口している。日露戦争時には180cmを超える巨躯とその猪突猛進な戦い様から「陸蒸気」とあだ名されたほど。現在は救世軍の活動を手伝うなど、慈善活動に精を出している。
喜八の兄。精悍としているが、細い体つきでいつもへらへらしている。人をからかうところがあり、喜八には「嘘つき」と警戒されている。喜八に電気の魅力を教えた張本人であり、神仏への疑念や自由奔放な振る舞い方も彼譲り。高いところが大好きで、夢はエッフェル塔に登ること。喜八が父に燃やされそうになった『電氣目録』を預かった。
スペシャル
書籍情報
二十世紀電氣目録